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上顎洞癌になった日から。

若くして上顎洞癌(じょうがくどうがん)という難病になってしまった妻をもつ夫の記録です。 この難病を生活の質を保ちつつどう治療し、克服するのか?この体験記を通じて同じ病気になった人への生きるヒントになれればと思います。

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  • 05/18/23:08

理想の治療法。

7月9日。妻は今、抗がん剤治療の2クール目に入っている。
この病院の方針からいくと、この2クールの抗がん剤治療が終わり次第検査をし、外科手術をする予定だった。
放射線治療を希望する場合は、今回の化学療法によって腫瘍の縮小が半分程度になる様な高い効果を示した時のみ、選択肢として入れていいだろうというものだった。

しかし、はっきり言ってわずか2クールの抗がん剤治療で、そこまで効果があるはずもなかった。
局所投与でもなく、まして扁平上皮に対して、よほど特異な例でもない限りそこまで急激な変化がないことなど、少し知識があるものなら最初からわかっていたはずである。

ここの病院の方針は、あくまでも確実な『根治性』を高める治療を優先することにあった。
事実、この『がんセンター』はがん治療の完治性において全国でもかなりの好成績を収めていた。

妻の担当医師は外科医であり、最初から外科手術での治療方針だけを示してきていた。
こちらから放射線治療についての提案をして、初めてその可能性について前記した条件を提示してきたのである。
もし何も言わなければ、放射線治療については触れないつもりだったと、その医師はハッキリと言いきった。
恐らくそれがこの病院の『根治性』を高めるための手段なのだと思った。
しかし、妻の担当医はまだ話のわかる人で、あくまで外科手術を勧めながらも、こちらの希望に沿うようにも考えてくれていた。

近年の放射線治療は、データだけを見れば外科手術と同様の好成績を収めてきている。
しかし、まだ未知数の部分が多く、個人差という壁にぶつかり、結局どの程度効果が得られるか、実際に放射線を当ててみないとわからないのが現実だ。あくまでも似たような症例からその可能性を探るしかない。

私が最後の最後まで、どちらを選択すべきか悩んでいたのもその部分で、確実性をとるのならば、やはり外科的手術にやや分があると感じていたからだ。



その理由として、まず第一に、放射線治療には身体の部位によって、照射できる限界値(総線量)が決まっている。
それ以上の照射を行ってしまうと癌細胞だけではなく、他の正常な細胞まで破壊してしまうからだ。
癌細胞が死ぬかわりに、ほかの障害が強く出てしまうようでは治療とはいえないのである。
だから放射線治療を行う際は、原則としてもう二度とその場所には放射線を当てることができない。
そうなると、より確実であり、最も自分にあった放射線治療を選ばないと、後悔してもやり直しはきかないだ。

そして第二に、放射線治療を行うと身体に直接的な傷はつかないが、やはり内部に細胞レベルでのダメージが蓄積される。
そうなると、その後外科的な手術をすると傷の治りが極端に悪くなり、最悪の場合は切開した部分が縫合せず腐ってしまう。
放射線治療が駄目だった時に外科手術をすればいい、というにはあまりにもリスクが大きすぎるのである。
術前照射というものがあるが、これは正常細胞がそこまでダメージを受けない程度に照射を抑えたのもで、外科手術をその後必ずやるという前提であるからこそ意味のある治療法だ。
あくまでも外科手術を受けないということを考えた放射線治療を行うならば、その後のことは考えずに、最大限の照射で完全に癌細胞を破壊するつもりでやらないと意味がないのである。

第三に、先ほどとは逆に、先に外科手術をした際のメリットとして、その後もし再発したとしても最終手段としてまだ放射線治療ができるという点がある。
また、外科手術によってとりきれなかった癌細胞があったとしても、術後照射によって目に見えない微細な癌細胞を破壊し、より確実性を高めることもできる。

以上の点だけでも、外科手術をした方が汎用も利き、生き残る治療法としてはベターな選択といえるかもしれない。
ただし、QOL(生活の質)を除いての話しであり、今回の病気に関してはそのQOLの比重がとても大きい。

私はできれば顔にメスを入れることなく、放射線治療で根治を目指せないか、可能な限り調べてきた。
そして、この段階で今一番有効だと思われる放射線治療はやはり『粒子線』を使用したものであるとの結論に達していた。
『粒子線治療』は普通に言われる放射線治療とは全く質の違うもので、その特性から近年注目されてきた治療法であった。
その原理や特徴については、少しでも興味を持った方からすればもうすでにご存知だと思う。

私はこの『粒子線治療』をするための施設を、ある程度決めていたが、実際にどこにするかはまだ決めていなかった。
もともと『粒子線治療』が可能な施設は、その時点で全国に7ヶ所だけしかなかったので大きく迷うことはなかったが、それでもその中から最も適した場所を選ばなければならない。失敗は絶対に許されないのである。

私が一番理想としていたのは、『粒子線治療』『化学療法』による併用療法であり、とくに『動注化学療法』ができる場所が最適だと考えていた。
場所もなるべく近いほうが良い。今は病院まで高速を使えば車で1時間かからず行けるので仕事帰りに毎日寄れるが、次も毎日とは行かないまでも、頻繁に見舞いに行くためには近ければ近いほどいい。
直接会うということは妻にとっても精神的な安定になるだろうし、私にとっても治療経過を目で見て確認できるのは安心できる。
医師に関しては直接あって話をすることで、その人となりや考えがわかるだろう。その口から自信をもって「この治療で治ります」と聞ける医師が一番好ましい。
それらを踏まえたうえで、最高の選択をしなければならない。

そして後日、いよいよ最終決断に向けて動き出すこととなった。

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