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上顎洞癌になった日から。

若くして上顎洞癌(じょうがくどうがん)という難病になってしまった妻をもつ夫の記録です。 この難病を生活の質を保ちつつどう治療し、克服するのか?この体験記を通じて同じ病気になった人への生きるヒントになれればと思います。

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  • 05/05/22:18

今までのこと、これからのこと。

2010年1月中旬。
陽子線治療を終え、退院してから3ヶ月以上が経過していた。
上顎洞癌と診断され、顔にメスを入れずに完治させるための治療を行ってきた。
しかし、予想外ともいえる結果により、顔の腫瘍が完全に消失することはなかった。
もしこれが当初の診断どおり『上顎洞癌』であれば、おそらくベストの治療であり、腫瘍は完全に消失するはずだった。
その為に今まで最善を尽くし、奔走してきたのだ。
だが『上顎洞癌』という病気自体が違っていた。

もともとこのブログは、『上顎洞癌』に対する情報の少なさから始めたものだった。
ここで自らの体験を公表することで、同じ様な状況の人に役立ててもらうとともに、逆にこちらが知らない情報を得るためにも活用しようとの考えがあった。
だが、今回このような特殊ともいえる状況となり、このような稀なケースが誰かの参考になれるとも到底思えず、更新することへの意味を失っていた。

結果として中途半端に投げ出されたようなかたちで更新がストップしたままになり、気が付けば年を越していたのだった。
このままでは何とも歯切れの悪く、心情的にも心残りだったため、近いうちにまとめたいと思っていた。
それに、ひとつ報告しておかなければならないこともあった。

それは放射線治療による副作用についてだ。
もちろん放射線治療によって起こり得る副作用は、事前に調べて知っていたし、治療前には医師からも説明があった。

しかし、はっきり言って甘く見ていた。

事前に知識として知っているのと、実際に目の当たりにするのとでは大きな違いがあると改めてわかった。
しかも、通常の放射線治療とちがい陽子線による治療であることから、副作用はかなり軽いものと思い込んでいたのだ。
実際に同じ部位に同じ治療をした人を知っていたら、どの程度のことが起こるか、その度合いや期間などの細かい情報が得られたのだろう。
しかし、安易にその症状を解釈し、治療後はある程度の副作用があるものの、症状は比較的軽く、早い段階で治療前の状態に戻れるものと楽観視してしまったのだ。

治療さえすれば、すぐにもとの健康な状態に戻れると。

放射線治療の副作用から回復するためには、個人差もあるが少なくとも半年から一年ほど時間がかかることは調べて知っていたはずなのに、退院の日にはやっと治療が終わったという安堵感からか何故かそう思い込んでいた。

現在、治療が終了してから3ヶ月以上が経過している。
当初はリンパ節にも照射したため、リンパ浮腫のような状態になり、そのリンパの流れの悪さから顔の左側だけむくみが激しく、朝起きた時には腫れ上がったようになっていた。
今はそのむくみも手でリンパの流れを促してやることによりほぼ解消してきた。
その他にも、むくみとは違った腫れを伴うことがあり、特に風邪気味になるなど体調を崩すと如実にその症状が現れた。
おそらくウィルスや細菌による感染が炎症を起こしていると思われる。
他の部位と違い、治療した部分は非常に感染しやすい環境にあり、これは今現在でも日によって症状が大きく出たりもする。
この腫れが大きいと開口障害もあり、食事のときに大きなストレスを感じるようだった。
また頻度は少ないものの、腫れのせいで神経を圧迫されるためか、唇のしびれを訴えることもあった。
眼球は照射により細かな傷が付いてしまい、視力の低下や物が二重に見えてしまうといった障害が起こっていたが、しばらく眼科に通院することで比較的早い段階で回復した。
しかし、何も無い時でも頻繁に涙が出て止まらないという症状が以前続いている。
本来涙を排出すべき腺が、照射により障害を起こしているためと考えられる。


だが全ての症状が、少しずつではあるが日々回復している。
このまま普段どおり健康に気をつけながら日常生活を続けていけば、半年から1年ほどでほぼ回復するのではないだろうか。
そうわかっていても、やはり本人からしてみれば毎日のことであり、例えば1年後に必ず完治するとわかっていても、今日明日のことこそが一番大事な現実だろう。
「気にせず気長に待て」なんて言葉は酷かもしれない。
そういう意味で誤算だった。
しかし、最近では本人も少なくとも半年は我慢して様子を見ようという気持ちに切り替わってきたようで、精神的に楽になったようだ。
これから病状はもちろん、副作用についてのケアも考えながら経過観察していこうと思う。

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検査後の考察。

9月13日。前日の検査結果について、今後のことも含めいろいろと考えていた。
妻が『上顎洞癌』と診断されてから、どんな病気か、どんな治療法がいいか、散々調べてきた。
そして、現在の治療方法へと辿りつき、それを行うことでQOLを維持しながら根治が目指せると思っていた。
しかし、それは通常の『上顎洞癌』の場合であって、今回のケースでは話が違った。
ということは、選択を誤ってしまったということなのだろうか。

私は、ここに至るまで何か見落とした部分はなかったか、過去の出来事を一つ一つ思い返していた。

まず初期症状として表れたのは奥歯の痛みだった。
痛みが出始めてからは、急激に腫れが大きくなった。
近所の歯科医院から市民病院へと紹介され、精密検査を受け、生検の結果『良性腫瘍』と判断された。
今思い返せば、この診断結果も全てが間違えではなかったのかもしれない。
歯科医が診察する口腔内での腫瘍は、そのほとんどが歯原性の良性腫瘍といえる。
歯原性腫瘍の種類によっては、骨破壊や局所浸潤がみられ、一見すると悪性と判断されがちな腫瘍もある。
市民病院での生検には3つの可能性が記されており、そのうちの一つとして『悪性とも良性ともとれない』といったような結果があり、画像所見で歯原性と判断していたのでそれを支持したのだろう。

だが、腫瘍の全てが良性だったわけではなく、一部が悪性腫瘍であったことを考えると、ここでの治療を断ったのは間違った判断ではなかったのだと思う。
しかしそれにしても、もし埋没歯による歯原性の腫瘍だと結論付けていたのなら、そのことを伝えて欲しかった。
それを知っていたら、病気について調べる際に、もっといろんな可能性を考えて調べられただろう。

市民病院の次に訪れた『がんセンター』ではどうだっただろうか。
初診の際に、CT画像をみながら医師らが話し合っていた言葉の中に「石灰化がみられる」と言っていたのを覚えている。
数多くの症例と実績を誇る癌専門の病院だけに、様々な種類の腫瘍を診てきたはずだ。
この段階でいくつもの可能性を考えていたに違いない。
その中から、生検結果を確定材料として今回の『上顎洞癌』という診断となったのだろうが、果たして『歯原性腫瘍』については全く可能性を考えなかったのだろうか。
もしかしたら治療方針が外科的手術であったため、どちらであろうと大差ないと考えていたのかもしれない。
また逆に、どういった腫瘍か細かな断定ができないと判断したから、外科的手術を推奨していたのだろうか。
『がんセンター』の放射線医に意見を聞きに行った際、外科手術以外の治療に否定的な反応だったのはそれを知っていたからなのか。

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