忍者ブログ

上顎洞癌になった日から。

若くして上顎洞癌(じょうがくどうがん)という難病になってしまった妻をもつ夫の記録です。 この難病を生活の質を保ちつつどう治療し、克服するのか?この体験記を通じて同じ病気になった人への生きるヒントになれればと思います。

NEW ENTRY

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

  • 05/05/18:25

今までのこと、これからのこと。

2010年1月中旬。
陽子線治療を終え、退院してから3ヶ月以上が経過していた。
上顎洞癌と診断され、顔にメスを入れずに完治させるための治療を行ってきた。
しかし、予想外ともいえる結果により、顔の腫瘍が完全に消失することはなかった。
もしこれが当初の診断どおり『上顎洞癌』であれば、おそらくベストの治療であり、腫瘍は完全に消失するはずだった。
その為に今まで最善を尽くし、奔走してきたのだ。
だが『上顎洞癌』という病気自体が違っていた。

もともとこのブログは、『上顎洞癌』に対する情報の少なさから始めたものだった。
ここで自らの体験を公表することで、同じ様な状況の人に役立ててもらうとともに、逆にこちらが知らない情報を得るためにも活用しようとの考えがあった。
だが、今回このような特殊ともいえる状況となり、このような稀なケースが誰かの参考になれるとも到底思えず、更新することへの意味を失っていた。

結果として中途半端に投げ出されたようなかたちで更新がストップしたままになり、気が付けば年を越していたのだった。
このままでは何とも歯切れの悪く、心情的にも心残りだったため、近いうちにまとめたいと思っていた。
それに、ひとつ報告しておかなければならないこともあった。

それは放射線治療による副作用についてだ。
もちろん放射線治療によって起こり得る副作用は、事前に調べて知っていたし、治療前には医師からも説明があった。

しかし、はっきり言って甘く見ていた。

事前に知識として知っているのと、実際に目の当たりにするのとでは大きな違いがあると改めてわかった。
しかも、通常の放射線治療とちがい陽子線による治療であることから、副作用はかなり軽いものと思い込んでいたのだ。
実際に同じ部位に同じ治療をした人を知っていたら、どの程度のことが起こるか、その度合いや期間などの細かい情報が得られたのだろう。
しかし、安易にその症状を解釈し、治療後はある程度の副作用があるものの、症状は比較的軽く、早い段階で治療前の状態に戻れるものと楽観視してしまったのだ。

治療さえすれば、すぐにもとの健康な状態に戻れると。

放射線治療の副作用から回復するためには、個人差もあるが少なくとも半年から一年ほど時間がかかることは調べて知っていたはずなのに、退院の日にはやっと治療が終わったという安堵感からか何故かそう思い込んでいた。

現在、治療が終了してから3ヶ月以上が経過している。
当初はリンパ節にも照射したため、リンパ浮腫のような状態になり、そのリンパの流れの悪さから顔の左側だけむくみが激しく、朝起きた時には腫れ上がったようになっていた。
今はそのむくみも手でリンパの流れを促してやることによりほぼ解消してきた。
その他にも、むくみとは違った腫れを伴うことがあり、特に風邪気味になるなど体調を崩すと如実にその症状が現れた。
おそらくウィルスや細菌による感染が炎症を起こしていると思われる。
他の部位と違い、治療した部分は非常に感染しやすい環境にあり、これは今現在でも日によって症状が大きく出たりもする。
この腫れが大きいと開口障害もあり、食事のときに大きなストレスを感じるようだった。
また頻度は少ないものの、腫れのせいで神経を圧迫されるためか、唇のしびれを訴えることもあった。
眼球は照射により細かな傷が付いてしまい、視力の低下や物が二重に見えてしまうといった障害が起こっていたが、しばらく眼科に通院することで比較的早い段階で回復した。
しかし、何も無い時でも頻繁に涙が出て止まらないという症状が以前続いている。
本来涙を排出すべき腺が、照射により障害を起こしているためと考えられる。


だが全ての症状が、少しずつではあるが日々回復している。
このまま普段どおり健康に気をつけながら日常生活を続けていけば、半年から1年ほどでほぼ回復するのではないだろうか。
そうわかっていても、やはり本人からしてみれば毎日のことであり、例えば1年後に必ず完治するとわかっていても、今日明日のことこそが一番大事な現実だろう。
「気にせず気長に待て」なんて言葉は酷かもしれない。
そういう意味で誤算だった。
しかし、最近では本人も少なくとも半年は我慢して様子を見ようという気持ちに切り替わってきたようで、精神的に楽になったようだ。
これから病状はもちろん、副作用についてのケアも考えながら経過観察していこうと思う。



最後に、少々しつこいかもしれないが、今回の病気をもう一度自分なりの考察を含めながら簡単にまとめてみる。

腫瘍の大部分は歯原性であり、いわゆる良性腫瘍だ。
上顎部に埋伏歯が2つあり、そのうちの1つが主となり腫瘍を形成したと思われる。
それは左目の左横辺りにあり、ちょうど上顎洞に腫瘍が広がりやすい位置にあった。
良性腫瘍なので転移や無限増殖もなく、基本的に死に至るものではない。
本来ならば症状もなく、そのまま気付かず一生を終えていたかもしれない。
しかし、その一部が悪性化してしまい、その特性から過度の膨張を引き起こし神経を圧迫、激しい痛みにより病院へと行くことになった。
そして、ちょうどその悪性部分を生検したことによって、全ての腫瘍が悪性と診断されてしまったのだ。
腫瘍が悪性化した場所はちょうど左上奥歯付近で、その位置関係から増大することにより、ちょうど口内に露出してしまったかたちとなり、飲食やその他の刺激により徐々に悪性化していったと予想される。
口内は健康な人でも様々な細菌が存在し、歯磨きの際に粘膜を傷つけてしまったり、疲労などで身体の抵抗力が落ちただけで口内炎ができたりするほどだ。
妻には金属アレルギーがあり、奥歯治療に使用された金属の詰め物が、左奥歯上から突出してきた歯原性腫瘍に触れることで刺激されたのも大きく関係しているのかもしれない。
これは『上顎洞癌』というよりも場所的にも『歯肉癌』に近いかもしれないが、おそらく既存のどの病気とも合致はしないだろう。

悪性腫瘍となった部分は今回の治療によって縮小消失し、根治すると思われる。
しかし良性腫瘍は抗がん剤も放射線も効かないため、外科的に除去する以外に治療する方法がない。
そうなると、結局顔にメスを入れなければならないのか?ということになるが、今後の方針としては経過観察によって対応していくことになっている。
つまり、このまま悪性部分が消失し、今の状態よりも腫瘍が縮小すると考え、その後良性腫瘍に増大するなどの変化が無ければ、通常通りの生活をしていくというものだ。
良性腫瘍は依然として残ったままになってしまうが、特に健康に支障がないのであれば、病気に気付かなかった時のように生活していけると思う。

何かスッキリとしない感はあるが、以前のように健康で外見も変わらずいられるのであればそれにこしたことはないのだ。
だがもし病状に変化があり、外科的に摘出しなければいけないような事態になった場合のことも考えておく必要があった。
そして、その場合は『上顎洞癌』としてではなく、『歯原性腫瘍(のう胞)』に対する治療なのだ。
そう考え調べると、顔に傷を付けずに行う治療法や手術方法がいくつかある。
その時にそれが行えるかどうかは、その時の状況になってみないとわからないだろうが、そもそも今後良性腫瘍がどうなっていくか誰にもわからないのである。

ただ私には一つだけ大きな懸念があった。

治療が終わり、良性腫瘍だろうと判断された時から思っていたことだった。
その不安から自分なりに調べたりもしたが、結論はでなかった。

それは『良性腫瘍に陽子線を照射したらその後どうなるのか?』ということだ。

いくつか特殊な例はあったものの、通常良性腫瘍に放射線治療は用いない。
しかも、X線よりも更に集中制の高い陽子線を照射したという話しは聞いたことがない

今回の「良性腫瘍の一部悪性化」が何らかの外的要素による突然変異だとしたら、この陽子線による照射も良性腫瘍を刺激する要因としては十分ではないだろうか。
そう考えてしまうと一抹の不安を覚えてしまうのである。
しかし、それはあくまで最悪のケースを想定した場合であり、N先生からは陽子線ではないが、稀に行われる良性腫瘍の照射治療では若干縮小するとの前向きな意見を頂いた。


これから「ああなるかもしれないし、こうなるかもしれない」と無意味に不安になっても仕方の無いことだし、「この状況から、そうなる可能性は・・・」と確率論で語れるものでもない。
どんな状況になっても対応できる準備と気構えは必要だと思うし、ただ単純に楽観視しているわけでもないが、今後については深く考えないことにしている。
といっても、自分の中である程度結論が出ているからこそ言えるのかもしれない。
その結論がどのようなものか、あえて語るつもりはないが、10年もしたら「やっぱり思った通りだったな」と一人満足していることだろう。
PR

無題

初めまして癌患者のstudy2007と申します。重粒子治療も陽子線もリニアックも経験があり、比較的様々な症例も知っているつもりでしたが、奥様の様な例は私は知りません。
苦しいなか情報を公開頂き、私自身は大変勉強になりましたし、頭頸部の腫瘍を罹患した方には、より有益なサイトではないかと思います。治療は区切りがついたとの事ですが、今後とも折りに触れ経過など公開して頂ければ、きっと多くの方の参考になると思います。

study2007さま

コメントありがとうございます。
ブログ拝見しました。
病気に関してとてもよく調べられていると同時に、考えにおいて共感できる部分も多くあり深く感銘を受けました。

仰るとおり大変珍しい症状とはいえ、全く他の人の参考にならないとも限らないかもしれません。
周囲への確認も兼ねて、今後とも長期間隔であるとは思いますが経過報告していければと思います。

  • 2010年01月14日木
  • MOT@管理人
  • 編集
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら