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上顎洞癌になった日から。

若くして上顎洞癌(じょうがくどうがん)という難病になってしまった妻をもつ夫の記録です。 この難病を生活の質を保ちつつどう治療し、克服するのか?この体験記を通じて同じ病気になった人への生きるヒントになれればと思います。

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  • 05/18/23:39

期待の粒子線治療。

7月10日。私は2クール目が終わると同時に、新たな治療に取り掛かれるように準備することにした。
まずは事情を担当医に話し、紹介状と今までの治療データを用意してもらうように頼んだ。その際『粒子線治療』について考えていることを伝えると、意外にも「粒子線は治療成績も悪くないので良いと思います」との言葉をもらった。

前回『粒子線治療』についての詳細を省いたが、まだ一般的には知名度がそれほどあるわけでなないようだ。
医者によっては、逆に「粒子線って何ですか?」と聞き返されることさえあるらしい。
そこで、まず『粒子線治療』について話しを進める前に、特徴について軽く触れておくことにする。

一般的に『放射線治療』に使われるのはX(エックス)線で、最も多く使われているリニアックはもちろんのこと、以前文中にもでたIMRT、トモセラピーにも使われている。
同じ電磁波の一種としてはγ(ガンマ)線があり、脳腫瘍治療で有名なガンマナイフなどで使用されている。
一方、『粒子線』とは高エネルギー粒子(原子)の流れで、その原子の数だけ種類がある。
現在『粒子線治療』として用いられている原子核は『水素』『炭素』で、水素原子核の流れを『陽子線』、炭素原子核の流れを『炭素イオン線』という。
よく『重粒子線』と呼ばれるのは『炭素イオン線』のことで、その原子核の重さからそう呼ばれる。
X線などの放射線との大きな違いは、その特性にある。
X線が身体に照射された場合、そのエネルギーは体表面からわずか1~2cmの場所でピークとなる。
そこから体内の奥深くへ行くほどエネルギー(威力)は弱くなりながら、最終的には身体を貫通する。
照射した直線上は、そこが正常部位であったとしても例外なくダメージを受けてしまうので、余計な副作用を起こしやすい。
IMRTなどはコンピューター制御などにより多少の範囲を制御できるが、特性までは消すことは出来ないので、どうしても正常細胞にも照射されてしまう。
また、身体の表面上ではなく、奥に腫瘍がある場合は、その威力が十分に行き届かず、大きな治療効果を得ることが出来ない。
しかし、『粒子線』の場合、ある一定の深さまで到達してからそのエネルギーのピーク迎えるように調節することができるのだ。(ブラッグピーク)
つまり、照射し始めは弱く、腫瘍などの重要な部分で最大威力を発揮し、その後身体を突き抜けることなくエネルギーが消失するという、実に優れた特性をもっている。
そのため、極めてピンポイントでの照射ができ、副作用も従来よりも大幅に減少させることができるのである。
また、放射線が細胞(DNA)を破壊する際の殺傷法についても大きな違いがあり、通常とは違う「再生」させないダメージを与えることができる。
『陽子線』『重粒子線』は同じ『粒子線』だが、大きな違いはその威力にある。
『陽子線』はX線などに比べても僅かな差しか違わないが、『重粒子線』はおよそ3倍の威力があるといわれている。これは原子核の重さに関係している。
いずれにせよ通常のX線やγ線を用いた放射線治療とは別格といえる特性により、場所によっては外科的手術以上の治療成績をあげているほど、優れた最新の医療技術なのである。

しかし、良いことだけではなく、デメリットも存在する。一番大きな問題はその価格で、『粒子線治療』そのものには保険が効かず、およそ300万かかる。近年、先進医療として認可されたので、そのほかの治療代には保険適用となるのがせめてもの救いだ。
もう一つは治療できる施設が限られていること。この『粒子線治療』を行うための施設には巨額の資金が必要で、建設だけでも100億以上はかかり、維持費も人件費抜きでも年間10億は必要なため、まだ世界的にも数が非常に少ないのだ。
幸い日本は世界で最も施設数があり、例えば『重粒子線治療』施設は世界にわずか3つしかないが、そのうち2つが日本にある。
『陽子線治療』の施設を合わせると2009年現在全部で7つ存在する。(2010年には更に2~3増える予定という)



私は『粒子線治療』を行うための施設を、全国7個所の中から距離的に近い3つに絞っていた。
それらの施設についての情報を、インターネットで調べるのはもちろん、実際に問い合わせをして疑問点を直接聞いたりもした。
しかし、残念ながら私が一番理想としている治療法を行っている施設は見つからなかった。
そこで、今度は距離に関係なく医療体制に重点を置いて、残り4つの施設を詳しく調べなおした。

すると、最近新しく開設された『粒子線治療施設』に目が止まった。
ここは全ての粒子線関連施設の中でも、自宅から最も遠い場所にあったため、詳しい情報を調べるのは初めてであった。
まず紹介記事をみて驚いたのが、ここの施設の責任者の名前が、どこかで聞いたことのある名前だったからだ。
そして間もなく思い出した。今現在治療を行っている『がんセンター』の元放射線科医で、『動注化学療法のパイオニア』的存在として有名な医師の名前だった。
私は直感的に「この医師ならきっと治してくれる」そう確信した。
何故そう思ったのかはっきりとしたものはなかったが、きっと「大丈夫、治ります」と言ってくれそうな気がしたのだ。
以前この先生について調べた際にもQOLを重視した「切らずに治す」を信念として、様々な治療に取り組み実績をあげてきた経歴を知っていたからだ。
その時、「私の妻もこんな先生に診てもらえたら安心だろうな」と思ったのを記憶している。
私は早速問い合わせをしてみることにした。今までの経緯や、今現在どの様な治療をしていて、今後どういった予定か、さらにQOLについて考えているため粒子線治療を選びたいなど、なるべく詳細にかつ簡潔にまとめたものをメールした。
一刻も早く回答を得たかったが、すぐに返事がもらえるわけではなく、数日かかる場合があるとの注意書きがあったので、その時点ではただ待つしかなかった。

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