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上顎洞癌になった日から。

若くして上顎洞癌(じょうがくどうがん)という難病になってしまった妻をもつ夫の記録です。 この難病を生活の質を保ちつつどう治療し、克服するのか?この体験記を通じて同じ病気になった人への生きるヒントになれればと思います。

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  • 05/19/00:10

衝撃的な結果。

9月12日。今日は昼すぎから『PET-CT』による検査のため、数時間前から水やお茶意外は口にできない。
妻は早朝のうちに軽い朝食を済ませて、昼からの検査に備える。
この検査によって追加治療の方針が決まるのだが、それよりもPET-CTによる腫瘍の反応が気になっていた。

3時間ほどかけて検査も無事に終了。
今日中に検査結果が出て、それをもとに先生から説明があるとのことだった。
それまで時間があるということで、夕方に早めの夕食を食べに出掛ける。
一時間ほどで病院へ戻ると、ちょうど指定された時刻だった。
しかし、まだ時間がかかるらしく、しばらく待つことになった。
今にしてみれば、今回の検査結果は先生方にも予想外であったため、その原因究明に時間がかかってしまったのだと思う。

N先生の準備が済み次第、看護士さんが病室まで呼びに来てくれるということで、二人で待つことにした。
すると、間もなくF先生が直接病室まできた。

まず先に今回の検査についての結果報告だけを伝えにきてくれたのだ。
結論からいえば「治療前に撮ったPET-CTの結果とほぼ変わらない」という思ってもいなかった、まさに想定外の結果報告であった。
それは形状、大きさはもちろん、PET-CTによる発光についても変化がみられないというのだ。

果たしてそれはいったいどういうことなのか?
検査結果が以前と大差なくとも、今回のケースでは成功という意味なのか。
治療は順調だったが、効果が今ひとつということなのか。
それとも治療自体が失敗に終わったということなのか。
その言葉からだけでは、それが何を意味しているのかはわからなかった。
詳しいことはN先生から、画像を見ながらの説明がある、ということでN先生のもとへと行く。

N先生の前にあるPCモニターには、今回のPET-CTの画像が映し出されていたが、確かに左頬辺りの腫瘍部分がPET特有の発光を表していた。
そして、治療前と治療後の2つの画像を並べることで、その変化のほどが簡単に確認できた。
先生方の説明を受けなくとも、素人にさえその差が大してないということ一目瞭然だった。



今回のこの結果に対する先生方の見解は、一般的な悪性腫瘍による上顎洞癌ではないという判断であった。
というのも、動注療法を行ったのにも関わらず、ここま腫瘍の縮小効果がみられないのは悪性腫瘍ではまず考えられないらしい。
それは、極まれに見られるという様な珍しいケースということではなく、長い間数多くの症例をこなしてきたF先生が今まで一度も経験がないというレベルの話しなのだ。
だがしかし、もちろん100%という保証はないので、動注が効かない(シスプラチンに極度の耐性がある)特殊な悪性腫瘍という可能性もある。

今一番可能性が高い予想としては、良性腫瘍が一部悪性化したものではないかということだった。
良性腫瘍というのは歯原性の腫瘍で、歯の発生過程における細胞が元となった腫瘍を指す。
実は妻には普通の人にはない場所に埋没歯があり、その場所というのがまさに左頬あたりにあるのだ。
歯原性腫瘍の多くは、埋没歯が何らかの関係をもっており、その可能性は大いに考えられた。

歯原性腫瘍はほとんどが良性であるが、1%以下という極稀な確率で悪性腫瘍のものが発生する。
一般的な歯原性腫瘍であれば、ほぼ良性腫瘍であるが、妻の場合は完全な良性腫瘍というわけではないのだ。
これが良性のみであるならば、抗がん剤は効かないはずだが、全く効かないというわけではなく、少なくとも多少の縮小効果はみられたのである。
それに、腫瘍の生検に関しては実績の高い、『がんセンター』が悪性と判断したのだから、その部分は間違いなく悪性だったのだろう。
また逆に悪性のみであるならば、前記した通り、ここまで高濃度のシスプラチンに対して耐性があるのは、実績あるF先生が見たことも聞いたこともないというのであれば、その可能性は極めて低いだろう。
これは良性腫瘍と悪性腫瘍との混合腫瘍ともいうべき存在であるため、一部の悪性腫瘍に対しては動注療法の効果があったとしても、全てに効果がないため通常よりも縮小効果がみられなかったと考えるのが一般的だ。

つまり、もとは良性の腫瘍であったが、その一部が悪性化し、ちょうどその部分を生検によって判断されたため、全部が悪性腫瘍である上顎洞癌と診断されたのではないか、というのだ。
そのため、奥歯の見える部分、生検した悪性腫瘍部は動注療法により縮小が見られたが、全体的な腫瘍としては縮小があまり見られず、CTやMRIなどでも変化があまり見られなかったというわけだ。

それらの理由が正しいとすれば、腫瘍が通常よりも大きく残っていることについて大体納得できるだろう。
だが、PET-CTの集積(SUV)による光はどういう理由によるものなのだろうか。
もし悪性である癌細胞の部分が完全に死滅しているならば、多くのFDGを摂取するはずもなく、結果として画像上に強い光を表すこともないはずである。
にも関わらず、今回のPET-CTの画像では相変わらず腫瘍部分が光を放っている。

しかし、これにはいくつかの理由が考えられた。
まず一つは炎症による光の可能性だ。
PETは癌細胞のみならず、炎症部分にも強く反応してしまう欠点がある。
今まで陽子線を限界まで照射したことによって、腫瘍部分が副作用により強い炎症を起こしていることが考えられた。
事実、妻の頬は表面上だけ見ても、皮膚に熱を帯びるほどの炎症があった。
この炎症が治まるのに通常数ヶ月を要する。
だが、このことは先生方も百も承知のはずで、それを踏まえたうえでの判断ができるからこそ検査を行ったのだと思う。
しかし、妻は通常よりも副作用の炎症が酷いように感じられ、その結果予想以上の集積を見せてしまい、判断が難しくなってしまったのだろうか。
もし炎症が原因であるならば、また数ヵ月後にPET検査をすれば結果も違ってくるはずだ。

もう一つの理由として、良性腫瘍による光の可能性だ。
悪性腫瘍だけではなく、良性腫瘍でも同じように多くのFDGを集積し、光を強く見せるものがあるのだ。
今回の頭頸部における良性腫瘍で、ここまで光る例はその段階では確認できなかったが、他部位ではよくあることだった。

とにかく、
どれもがあまりにも突然であり、すぐに状況を飲み込み、考えを巡らせるには少し時間を要した。
それが結果的に良いか悪いかを別として、今まで一般的な『上顎洞癌』だとばかり思っていただけに、大きなショックを受けたことには変わりなかった。

結局、その検査結果による先生方の話を聞いて病院をあとにしたのは23時を過ぎた頃であった。
今回の結果についての考察は、まだ情報の整理が必要で、それには時間が足りず、また後日まとめることにした。

明日、改めてゆっくりと考えるつもりで床についたが、今までの様々な事柄が頭を駆け巡り、なかなか寝付けなかった。
 

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通りすがりの追伸。

さっきの通りすがりです。ついでに。

私の良性腫瘍も、PET検査の結果、バッチリ光っていましたよ。
なので、医師たちも自分も家族も、誰もがみんな「悪性」と決め込んでいました。

「もう時間がない、明日から放射線治療を始めましょう」
そう言われた夜に良性だとわかり、ギリギリセーフで間に合ったんです。

良性なのか悪性なのか、判断が難しいのかな。

なんか怖いですね。

  • 2009年09月21日月
  • 通りすがり
  • 編集

大変参考になります。

お返事頂きありがとうございます。
同部に発生する良性腫瘍でのPET発光は、調べてもなかなか出てこなかったので大変参考になりました。
もしかすると、妻と同じ質の腫瘍なのかもしれませんね。
そうなると、その他の事柄も非常に気になります。
最終的な病名、医師からの説明はなんだったのか。
何処の病院でどの先生が担当されたのか。
術後、どのような治療や再発防止策を行ってきたかなど・・・。
これらは調べても簡単に得られる情報ではありません。
もしご迷惑でなければ教えて頂けないでしょうか。

実名への配慮や、長文になるようでしたらメールでも構いません。
どうぞよろしくお願い致します。

無題

診断名は、たしか「左上顎洞内異所性髄膜種」とかいう名前だったと思います。(おそらく)
脳内にできるはずの髄膜種という腫瘍が、どういう訳か上顎洞内にできてしまったという話でした。

が、しかし。
保険会社に提出するための診断書が、やっと退院後1ケ月くらいして送ってきました。
そこに書いてあった病名は「左上顎洞内良性腫瘍」に変わっていました。
担当の先生に電話して聞いてみると、後日違う機関にも病理検査を出してみたところ、髄膜種じゃなかったことが判明したとのことでした。
「ごめんね~!言ってなかったっけ?ただの良性腫瘍だったよ~!名前?ないよ。二例目が出れば名前がつくかもね~。ハハハ。」って、そんな感じです。
私の方も「ふ~ん、そうなんだ」って位です。

私も先生も大ざっぱな性格で。
ご主人からは信じられない適当さですよね。

手術的には、昔の蓄膿症の手術法と言っていました。術後は、傷口が落ち着くまでの2週間くらい、縫合せずにガーゼをパンパンに詰めて、毎日口の中から入れ替えをしました。
激痛のあまり気絶する人もいるらしく、毎日1時間前に鎮痛剤を飲んで挑みました。
腫瘍自体は、摘出するのに先生たちの手が痺れたほどの硬さで、うっすら膜が張っていたそうです。

今は、半年に1回ほど通院して、カメラによる経過観察とMRI検査をしています。
手術ついでに、鼻の奥の方に経過観察時のカメラ用の直通穴を開けています。
再発の予防は何一つしていません。

本当に信じられないほどの大ざっぱな上に、半分やけくそになっていたし、ご主人みたいに詳しく調べてくれる人もいなかったし、実はほとんど何も分かりません。
参考にならなくてすみません。

病院名・担当医名は諸事情により、伏せさせていただきます。

  • 2009年09月22日火
  • 通りすがり
  • 編集

感謝します。

ご丁寧にお返事頂きありがとうございました。
実際に治療した方の話はなかなか聞けるものではなく、大変参考になりました。
口腔内にできる良性腫瘍の90%以上が歯原性のものだと聞きます。
妻の場合もおそらく、それに関係していると思われます。
もしかしたら、それにも当てはまらない特異な腫瘍だったのかもしれませんね。
私もB型なので大雑把で面倒くさがり屋ですから、自分のことだったらあまり気にしなかったかもしれません。
今回のことで「人間やればできる」ということを改めて実感しました。

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