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上顎洞癌になった日から。

若くして上顎洞癌(じょうがくどうがん)という難病になってしまった妻をもつ夫の記録です。 この難病を生活の質を保ちつつどう治療し、克服するのか?この体験記を通じて同じ病気になった人への生きるヒントになれればと思います。

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  • 05/19/00:35

淡い期待。

6月13日。私はこの時すでに外科的な手術以外で考えるならば、どの様な治療がふさわしいのか、ある程度見当をつけていた。
それは『QOL』(生活の質)を損なうことなく、『根治』の可能性があるものだった。
あとは専門家の意見を聞き、それを踏まえたうえで更に検討を重ねるだけだ。
いくつかある選択のうちの1つとして、この病院でも可能な『トモセラピー』『超選択的動注化学療法』(+TPF療法)による併用治療を考えていた。

この病院については、入院する前から調べており、放射線治療と『超選択的動注化学療法』との併用治療を行うことによって高い実績を残してきたことがわかっている。
更に放射線治療の設備も充実しており、『IMRT』(強度変調放射線治療)と組み合わせた『トモセラピー』も揃っていたのだ。
『トモセラピー』を簡単に説明すると、従来の放射線治療機よりも遥かに正確かつ確実に病巣を捉え治療することが可能になった最新設備で、これによって放射線治療による副作用も大幅に減らすことができるようになった。
『ライナック』などよりも多方向から照射するうえに、CTスキャンと高度なコンピューター制御により、照射範囲の精度も格段に増している。
現在のX線による放射線治療機器の中では、おそらくこれが一番効果が得られるだろう。

外科的手術以外を選択する治療方法を調べていた際に、私はいくつか妻に似た、むしろ妻よりも症状の重い患者が、この併用療法により完治した例をいくつも知っていた。
特に『超選択的動注化学療法』(※以下『動注療法』)は、頭頸部腫瘍において絶大な効果をもたらす化学療法だった。
その治療原理は実に単純で、腫瘍に栄養を送っている血管に対し、直接抗がん剤を流し込むこというものだ。それにより通常の全身投与よりも数百倍という濃度の抗がん剤が腫瘍に届き、抹消血管の隅々まで薬剤効果が行き渡るのだ。
更にあらかじめ中和剤を投薬することにより、全身投与よりも遥かに副作用を軽減できるという点も優れていた。



治療方法を具合的にいうと、まず耳の前方、こめかみ付近にある浅側頭動脈からカテーテル(極細の管)を挿入する。
ある程度進んだところでカテーテルを挿入した血管の根元付近を縛る。
それにより血流は縛った先にはいかず、他の血管へと流れる。
その先というのがまさに腫瘍に栄養分を送っている血管なのである。
そして、カテーテルより抗がん剤を投薬することにより、その血流によって濃度の高い抗がん剤が腫瘍まで運ばれるという仕組みなのだ。

カテーテルを挿入する場所は、足の付け根など他にもいくつかあるが、頭頸部腫瘍に関してはこれが最もベストと言えた。

私が『動注療法』が必要不可欠だと感じ、この病院でも行っていると知った時に、ひとつ嬉しい誤算があった。
それはこの病院に『動注療法』を長年続け、その高い治癒率から一躍全国にその治療法を流行させた『動注療法のパイオニア』的な医師がいたことだ。
その実際に行った症例数は、なんと世界一という。

しかし、実際には私が得た情報が少し古かったようで、残念なことに近年になって他の病院へと移ってしまっていた。

それでも技術は引き継がれているだろうと思い、期待をせずにはいられなかった。

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