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上顎洞癌になった日から。

若くして上顎洞癌(じょうがくどうがん)という難病になってしまった妻をもつ夫の記録です。 この難病を生活の質を保ちつつどう治療し、克服するのか?この体験記を通じて同じ病気になった人への生きるヒントになれればと思います。

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  • 04/05/04:29

大きな一歩。

7月16日。この日は間違いなく『運命の日』と呼べるだろう。
私は、数日前「セカンドオピニオン」として予約していたある施設まで来ていた。
ここは『粒子線治療』の一つである『陽子線』を使用した治療を行っている場所で、まだ開設して1年も経過していない新しい施設だった。
粒子線治療施設の中でも自宅から一番遠方にあり、新幹線を乗り継いでも4時間ほど掛かる。
しかし、いくら遠くても来るだけの価値は絶対にあると確信していた。

まず最初にその施設における設備の充実ぶりに驚かされた。
放射線治療全般に言えることだが、余計な副作用を起こさないためには、病巣に寸分の狂いもなく照射する必要がある。
そのためにレントゲンやCTなどを使用したりするが、ここでは更に精度の高い『PET-CT』を陽子線治療専用として使用する。
『陽子線治療』『PET-CT』の2つの最先端医療機器を併せて使用しているのは、世界でもここだけだ。

そして、やはり期待すべきは医師の方々である。
特にこの『陽子線治療センター』のセンター長であるF先生は、現在妻が入院している『がんセンター』で20年以上放射線治療と化学療法との併用治療を行い、外科的手術をしない治療法で数多くの患者を救ってきた人物だ。
放射線科部長と副医院長を兼任してきたが、その地位を捨てて「切らずに治す医療」を極めるべく『陽子線治療』に全てを賭け、ここのセンター長を引き受けたという。
私が期待している『超選択的動注化学療法』は、今では広く行われているが、実は未だにその治療法について細かい定義が成されていない。
つまり、「この症状には、どの薬をどれくらいの量、どの程度の期間をかけて投薬すれば効果的」などの決まりごとがないのだ。
それはまさに、各医師の技量や経験という、不明確なものに頼らざるをえない事を意味していた。
そうなると、やはり一番治療経験があり、かつ根治させてきた実績が多い医師が望ましいということになる。
その経験や実績が世界一ともいわれるF先生ならば、まさに申し分ない。
そもそも『粒子線治療』『超選択的動注化学療法』を併用治療してくれる施設すらないに等しいのである。
それらを考えれば、この施設がどれだけ恵まれているか言うまでもない。

ただ一つだけ不安があった。
これだけ期待している分、もしF先生からも「放射線治療ではなく外科的手術の方が良い」と言われてしまったら・・・
この先生以上の人はいないだろうと考えているだけに、他の放射線施設でセカンドオピニオンを受ける気には到底なれないだろうと感じていた。
しかし、まだ起きもしないことで不安になったところで何の意味もない。
まずは直接会って、こちらの今までの経緯や現状、そして今後どの様な治療を望んでいるか率直に伝えることにした。

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念には念を。

7月11日。妻の抗がん剤治療は2クールの4日目を迎えた。
今後の治療法について、一番理想としているは『粒子線治療』+『動注化学療法』との併用療法だが、もし万が一それが叶わなかった場合に備えて、その他の治療についても準備が必要だと考えていた。
「放射線治療での根治は難しい」と、どの放射線科医も言うのであれば、外科手術を選択するしかない。
私はQOLにこだわるあまり、一番大切な『生きる』ことを諦めたくはなかった。
ならば、外科手術を行ったとしても極力QOLを保てる方法を考えるしかないのである。

現在治療中のこの『がんセンター』は、外科手術の症例数も多く、その腕前も申し分ないと思う。
しかし、QOLを含めて考えるならばもっと他に選択できる治療が必要だった。
というのも、以前担当医に外科手術をするとした場合の選択肢の一つとして、QOLを重視した外科的手術ができないか聞いた事があった。
術前放射や動注などの化学療法で腫瘍を縮小させ、切除範囲を狭めることによって温存範囲を増やせないかと提案してみたが、例え腫瘍が大きく縮小しようが、初めからの切除範囲は変更しないとの答えだった。
それは、腫瘍が縮小したことによって、余分に切除できる範囲が広がったと判断し、より根治性を高めるためだという。

つまり、ここではどう治療しようが、結局は顔面半分を大きく変形させるような外科手術は避けれないということを意味していた。
しかも、当初は眼球は温存できるだろうという話だったが、いつの間にか「外科手術中の判断によって眼球も摘出する可能性がある」との見解に変わっていた。
もしかしたら、始めからそのつもりだったが、最初からそう言ってしまうと外科手術を拒否される可能性が高いと判断して、あえて時期が近づいてきてから言い出したのだろうか・・・

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期待の粒子線治療。

7月10日。私は2クール目が終わると同時に、新たな治療に取り掛かれるように準備することにした。
まずは事情を担当医に話し、紹介状と今までの治療データを用意してもらうように頼んだ。その際『粒子線治療』について考えていることを伝えると、意外にも「粒子線は治療成績も悪くないので良いと思います」との言葉をもらった。

前回『粒子線治療』についての詳細を省いたが、まだ一般的には知名度がそれほどあるわけでなないようだ。
医者によっては、逆に「粒子線って何ですか?」と聞き返されることさえあるらしい。
そこで、まず『粒子線治療』について話しを進める前に、特徴について軽く触れておくことにする。

一般的に『放射線治療』に使われるのはX(エックス)線で、最も多く使われているリニアックはもちろんのこと、以前文中にもでたIMRT、トモセラピーにも使われている。
同じ電磁波の一種としてはγ(ガンマ)線があり、脳腫瘍治療で有名なガンマナイフなどで使用されている。
一方、『粒子線』とは高エネルギー粒子(原子)の流れで、その原子の数だけ種類がある。
現在『粒子線治療』として用いられている原子核は『水素』『炭素』で、水素原子核の流れを『陽子線』、炭素原子核の流れを『炭素イオン線』という。
よく『重粒子線』と呼ばれるのは『炭素イオン線』のことで、その原子核の重さからそう呼ばれる。
X線などの放射線との大きな違いは、その特性にある。
X線が身体に照射された場合、そのエネルギーは体表面からわずか1~2cmの場所でピークとなる。
そこから体内の奥深くへ行くほどエネルギー(威力)は弱くなりながら、最終的には身体を貫通する。
照射した直線上は、そこが正常部位であったとしても例外なくダメージを受けてしまうので、余計な副作用を起こしやすい。
IMRTなどはコンピューター制御などにより多少の範囲を制御できるが、特性までは消すことは出来ないので、どうしても正常細胞にも照射されてしまう。
また、身体の表面上ではなく、奥に腫瘍がある場合は、その威力が十分に行き届かず、大きな治療効果を得ることが出来ない。
しかし、『粒子線』の場合、ある一定の深さまで到達してからそのエネルギーのピーク迎えるように調節することができるのだ。(ブラッグピーク)
つまり、照射し始めは弱く、腫瘍などの重要な部分で最大威力を発揮し、その後身体を突き抜けることなくエネルギーが消失するという、実に優れた特性をもっている。
そのため、極めてピンポイントでの照射ができ、副作用も従来よりも大幅に減少させることができるのである。
また、放射線が細胞(DNA)を破壊する際の殺傷法についても大きな違いがあり、通常とは違う「再生」させないダメージを与えることができる。
『陽子線』『重粒子線』は同じ『粒子線』だが、大きな違いはその威力にある。
『陽子線』はX線などに比べても僅かな差しか違わないが、『重粒子線』はおよそ3倍の威力があるといわれている。これは原子核の重さに関係している。
いずれにせよ通常のX線やγ線を用いた放射線治療とは別格といえる特性により、場所によっては外科的手術以上の治療成績をあげているほど、優れた最新の医療技術なのである。

しかし、良いことだけではなく、デメリットも存在する。一番大きな問題はその価格で、『粒子線治療』そのものには保険が効かず、およそ300万かかる。近年、先進医療として認可されたので、そのほかの治療代には保険適用となるのがせめてもの救いだ。
もう一つは治療できる施設が限られていること。この『粒子線治療』を行うための施設には巨額の資金が必要で、建設だけでも100億以上はかかり、維持費も人件費抜きでも年間10億は必要なため、まだ世界的にも数が非常に少ないのだ。
幸い日本は世界で最も施設数があり、例えば『重粒子線治療』施設は世界にわずか3つしかないが、そのうち2つが日本にある。
『陽子線治療』の施設を合わせると2009年現在全部で7つ存在する。(2010年には更に2~3増える予定という)

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理想の治療法。

7月9日。妻は今、抗がん剤治療の2クール目に入っている。
この病院の方針からいくと、この2クールの抗がん剤治療が終わり次第検査をし、外科手術をする予定だった。
放射線治療を希望する場合は、今回の化学療法によって腫瘍の縮小が半分程度になる様な高い効果を示した時のみ、選択肢として入れていいだろうというものだった。

しかし、はっきり言ってわずか2クールの抗がん剤治療で、そこまで効果があるはずもなかった。
局所投与でもなく、まして扁平上皮に対して、よほど特異な例でもない限りそこまで急激な変化がないことなど、少し知識があるものなら最初からわかっていたはずである。

ここの病院の方針は、あくまでも確実な『根治性』を高める治療を優先することにあった。
事実、この『がんセンター』はがん治療の完治性において全国でもかなりの好成績を収めていた。

妻の担当医師は外科医であり、最初から外科手術での治療方針だけを示してきていた。
こちらから放射線治療についての提案をして、初めてその可能性について前記した条件を提示してきたのである。
もし何も言わなければ、放射線治療については触れないつもりだったと、その医師はハッキリと言いきった。
恐らくそれがこの病院の『根治性』を高めるための手段なのだと思った。
しかし、妻の担当医はまだ話のわかる人で、あくまで外科手術を勧めながらも、こちらの希望に沿うようにも考えてくれていた。

近年の放射線治療は、データだけを見れば外科手術と同様の好成績を収めてきている。
しかし、まだ未知数の部分が多く、個人差という壁にぶつかり、結局どの程度効果が得られるか、実際に放射線を当ててみないとわからないのが現実だ。あくまでも似たような症例からその可能性を探るしかない。

私が最後の最後まで、どちらを選択すべきか悩んでいたのもその部分で、確実性をとるのならば、やはり外科的手術にやや分があると感じていたからだ。

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放射線治療の可能性。

7月8日。この日は、現在治療を受けているこの『がんセンター』の放射線科医に、今後の治療方針についての意見を聞くことになっていた。
以前から放射線治療について様々なことを調べてはいたものの、実際に現職の専門家に意見を聞くのは今回が初めてであった。
調べている中で思った細かい疑問点や、実際に経験した中での意見を聞けるのを楽しみにしていた。

ここの病院では、以前書いたように『動注化学療法』『トモセラピー』による併用療法が好成績を収めており、私達にとって希望的な話が聞けると期待していた。
だが、この後の話し合いで今までにない衝撃を受けることになる。

その日の夕方、最後の診療を終えた医師のもと、話を聞きに放射線科まで出向いた。
妻と二人で部屋に入り、CTなどの資料を見ながら考えをまとめている医師の言葉を待った。
まずはこちらの考えや、方針は語らず、その医師の率直な意見を聞こうと思ったからだ。

なかなか言葉が出てこない医師だったが、険しい顔をしながらもポツリポツリと話し始めた。
それらの言葉をつなぎ合わせ、まとめるとこうだ。

●まず、初見は大変珍しく放射線治療によるイメージがつかめない。
●よって治療を施したとしても治るとは思えない。
●少なくとも自分の経験上からは難しい。
●放射線科医ではあるが、外科的手術をした方が良い。

などという、何とも否定的な言葉ばかりに正直驚きを隠せなかった。
確かに、妻の『上顎洞癌』という病気は、一般的に男性がなるもので、特に50代~がほとんどである。若い女性がなる例は珍しいといえるかも知れない。
しかし、だからと言って、癌細胞自体は扁平上皮であり、最もポピュラーな分類に属するものだ。
頭頸部は放射線が比較的利きやすく、扁平上皮癌も根治性は外科手術と大差ないパーセンテージまで上がってきているはずなのだ。
その点について聞くと、「とにかく初見が珍しいので何ともやってみないとわからない」と言うばかり。
そこで、今一番外科手術以外で可能性のある『動注化学療法』(TPF含む)『粒子線治療』について聞いてみる。

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