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唯一の正解。
7月30日。今日いよいよ『陽子線治療』を始める。
妻は前日より現地入りし、治療への準備は万全だった。
私は残念ながら付き添うことができないため、妻の両親が一緒に行ってくれていた。
実際の入院は少し先なのだが、一刻も早く治療を始めたいというこちらの希望を聞いてもらい、陽子線治療を先行して行うことになった。
入院するまでの間は、ホテルに連泊したりするのが一般的らしいが、義父母が病院近くにマンスリーアパートを借りてくれたので、しばらくはそこからの通院となる。
病院付近にそういった拠点的なものがあれば、私が妻の見舞いなどで訪れた際も、そこに泊まれるだろうとの配慮があってのことだった。
妻が病気になる前からそうなのだが、いつも義父母には良くしてもらい感謝してもしきれないほどだ。
早速『陽子線治療センター』へと行き治療を始める。
これからどの様な治療をしていくか、再度簡単に説明を受けたあと、いよいよ陽子線治療が始まる。
私が直接治療を受けたわけではないので、実際にどんな感じかはわからないが、妻の感想では「陽子線がどの部分に、何回照射されているのがわかる」らしく、それ以降の治療の度に
「今日はどこに何回照射した」と報告してくれていた。
そして照射後に「陽子線の匂いが鼻に残る」らしく、それがふとした時に匂うという。
治療の所要時間としては、照射前の固定具装着や照射位置の確認などで少し時間がかかるだけで、照射自体はあっという間に終わる。
全てを含めても20分かからないくらいだろうか。
当然ながら1日に1回の照射しかできないので、その後は何もすることがない。
基本的に通院だけで治療するが、条件的に入院をしなければいけない人もいる。
そういった人は、治療が終わったあと病室に戻ってもやることもなく暇で仕方ないらしい。
苦痛もなく、副作用もほとんどない、短時間な治療法だからそう思うのかもしれないが、考えてみれば贅沢でもあり嬉しい悩みとも言える。
妻は自宅が遠方であり、通院できないということと、『動注化学療法』の併用治療をするために、入院管理が必要だった。
まだ化学療法を行う前なので、とりあえず数日間だけは通院ということになる。
照射範囲は当初の予定よりも大きくとることになった。
左眼全体を含む、ほぼ顔半分を照射するのだ。
今までの検査によると、目と目の間や、目の奥にも腫瘍(癌細胞)がある可能性を否定できなかった。
そこで念のために予想される範囲全てに陽子線を照射することになったのだ。
局所再発の場合、目の奥やその周囲で起こる場合が非常に多い。
それは眼に対する副作用を恐れて、照射範囲を狭くしたり、線量を落としてしまうからだ。
正常細胞へのダメージを軽減するということは、癌細胞に対しても攻撃の手を緩めるということに等しいのだ。
私もできれば目に対して注意を払って頂きたいと思っていたが、そんなことは当然とばかりの治療計画を立ててくれていた。
やはり今まで同じような症例を数多く治療してきた分、根治するための方法を心得ており、流石と思ったと同時に信頼のおける先生方に出会えたことに改めて感謝した。
今後も安心して任せることができるだろう。
目への照射による副作用は、視力が衰えたり、白内障になる可能性があるのが大きな点だ。
もしかしたら治療後数ヶ月に起こる晩期障害により、更に何らかの良くない症状があるかもしれない。
特に唾液腺障害などが多く、ドライアイ、ドライマウスなどが考えられるが、個人差はあるにしても発生率は5%以下という低い確率らしいので、それほど心配しなくてもいいだろう。
いずれにせよ、再発するリスクや、外科的手術により眼球摘出することに比べたら、どちらを選択すべきか考えるまでもない。
私は今まで『上顎洞癌』の様々な治療に対する可能性を探り、その中から妻にとって一番最適なものは何か模索してきた。
そして、最終的な結論として導き出したのが、ここでの『陽子線』と『動注化学療法』という治療だった。
今回こうやって治療が無事に開始されたことによって、一つの大きな仕事終わった様に思い、やっとひと段落つけた気がした。
これからはこの治療が終わった後について、つまり再発防止のための治療に関して考えることができる。
まだまだやるべきことは山積みなのだ。
『がん』とは本当に恐ろしい病気だ。
病気になった本人だけではなく、その周囲である家族や友人をも大きく巻き込んで、それぞれに深い苦しみや悩みを与える。
しかも、治療したからといってそれで終わるわけでもなく、数ヶ月、数年、数十年と再発に怯えながら検査や治療を続けなければならない。
私は今回の『陽子線治療センター』での治療という選択が、数多くある答えの中でも唯一の正解だと信じている。
それは世界で一番の治療である事と同じ意味だから。
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